大判例

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広島高等裁判所松江支部 昭和24年(ネ)45号 判決

当事者双方の事実上の主張は、控訴代理人において(一)自作農創設特別措置法第七條の採用しておる訴願前置主義は訴の提起前に必ず同條の定める異議および訴願の両手段を盡くすことを要求しているから、出訴期間は第二の訴願に対する裁決を知つた日から起算すべきである。もし第一の異議申立に対する決定を知つた日から起算すべきものとすれば第二の訴願は有名無実となるか或いは訴願により救済の目的を達し得るに拘らず期間徒過を恐れて同時に無用の訴訟を提起せざるを得ない結果を生ずる。故に控訴人が裁決書の送達を受けた昭和二十三年七月二日より起算し一個月の出訴期間内に提起された本訴は適法である。(二)訴訟係属中に請求の趣旨を補充訂正するも、訴の基礎に変更のない限り訴訟はその同一性を失わない。從つて基本訴訟において出訴期間を遵守しておれば充分であつて補充訂正の時から更に出訴期間を起算すべきでない。控訴人は昭和二十三年十一月十日本訴の請求の趣旨を補充訂正したけれども、それは本件買收計画の除去を目的とする基本請求の範囲を逸脱したものでなく、唯その表現を異にしたに過ぎないものであると附加した外原判決摘示事実と同一であるから、こゝにこれを引用する。(立証省略)

四、理  由

よつて、被控訴人鳥取縣農地委員会に対する本件行政処分取消の訴が適法か否かについて判断する。自作農創設特別措置法に基く農地買收計画に対し異議の申立をし、その決定に対し更に訴願の申立をした場合には買收計画に対する出訴期間は異議に対する決定があつたことを知つた日から起算されるのでなく、訴願の裁決があつたことを知つた日から起算されるものと解するを相当とする。蓋し自作農創設特別措置法の如く農地委員会の農地買收計画に対して異議の申立及び訴願をすることができることとされているものであつては、異議の申立に対する決定を経た後訴願をしないで直ちに出訴することができると同時に訴願をしてこれに対する裁決のあつた後に出訴することもでき、そのいずれによるべきかは処分を受けた者の自由選択に委ねてあるものと解すべきであるから、若し原処分のあつたことを知つた日から出訴期間を起算しなければならないとすると、場合によつては、処分を受けた者に訴願の裁決をみて出訴するか否かを決定しようとする自由を喪失させ、甚しく酷に失するからである。而して被控訴人鳥取縣農地委員会が昭和二十三年六月十日控訴人のした訴願を棄却する裁決をし、控訴人が同年七月二日その旨の通知を受けたことは当事者間に爭いがないから、控訴人は同日訴願の裁決のあつたことを知つたものと認むべくその後一箇月の訴願期間内に提起された本訴は適法であるといわねばならない。もつとも控訴人が本訴において当初請求の趣旨として鳥取縣八頭郡若櫻町農地委員会が昭和二十三年一月九日樹てた農地買收計画の取消のみを主張し、右訴の係属中更に昭和二十三年十一月十日に至り初めて請求の趣旨変更申請と題する書面を提出し「被控訴人鳥取縣農地委員会が昭和二十三年六月十日なした裁決を取消す。前記若櫻町農地委員会のした買收計画はこれを取消す」旨主張するに至つたことは記録上明らかであるけれども、もともと控訴人が前記若櫻町農地委員会の樹てた農地買收計画を不服として異議及び訴願の両不服手段を盡くした後更に訴願の裁決廳であつた被控訴人鳥取縣農地委員会を被告として本訴を提起した趣旨は、前記若櫻町農地委員会の樹てた農地買收計画を是認して控訴人の訴願を排斥した被控訴人鳥取縣農地委員会の裁決を不服とするものであるから控訴人が本訴において当初請求の趣旨として前記若櫻町農地委員会のした農地買收計画を取消す旨を掲げ、その後右請求の趣旨の冐頭に被控訴人鳥取縣農地委員会が昭和二十三年六月十日なした裁決を取消す旨の一項を付加したことは、たとい、請求の趣旨変更の形式のもとになされたとしても、請求の趣旨の変更(即ち請求の拡張による訴の変更)ではなく、請求の趣旨の單なる補充訂正で、訴訟物の範囲は前後同一であると認めるを相当とする。從つて、民事訴訟法第二百三十五條は本件にはその適用がないものといわねばならない。されば、控訴人の本訴請求は出訴期間を遵守して適法に提起されたものであるにかゝわらず右と異なる見解のもとに不適法としてこれを却下した原判決は、不当であるから、これを取消し、民事訴訟法第三百八十八條に則り主文のとおり判決する。

(裁判官 久利馨 藤間忠顕 組原政男)

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